新しいケアの形「スポーツアロマ」とは?おすすめの精油(エッセンシャルオイル)と実践方法

最近アロマセラピーという言葉は浸透してきて、香りで心を癒すというような認識をしている方が多くいるのではないでしょうか。アロマの世界は奥深く、香りを楽しむだけでなく他にも効能がたくさんある事、心だけでなく身体も癒せる事が分かっています。そんなアロマはスポーツの世界でも広がりを見せています。

2017年10月03日更新

アロマ

高橋 美穂子 (アロマセラピスト)

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[1]スポーツアロマとは

スポーツとアロマって関係あるの?

日本ではアロマセラピーと聞いても、アロマの意味だけが先行してしまい、香りを楽しむものという認識が強くなっています。

しかし、実際は植物が持つ心地よい香りや薬効成分を身体に取り入れて、心と身体の健康を促進することができるので「自然療法」として使用することができます。

フランスなどでは医師の処方箋の元、精油(エッセンシャルオイル)をブレンドして使用されています。
そして様々な作用が期待できるアロマセラピーを、スポーツの分野でも使用できるのではないかと、アスリートの間でじわじわと浸透してきました。

例えば疲労回復やホルモンバランス調整、筋肉痛の緩和や怪我の予防までも可能にしてくれます。どのような症状が出ているのか、どのような効果が欲しいのかで精油(エッセンシャルオイル)を選び、マッサージやストレッチと組み合わせてコンディションを整えていきます。

現在では様々な 競技の選手が取り入れている手法となっています。

スポーツアロマはアロマセラピーと違うの?

スポーツアロマもアロマセラピーも植物の薬効成分を活用した自然療法ということは同じです。しかし活用する目的が異なってきます。

スポーツアロマでは、競技能力を向上させるためや、あらかじめ怪我の予防をするために使用されています。そのため大切な大会前に筋力や持久力を高め集中したい時と、大会後やトレーニング後で筋肉疲労を取りたい時でもケアの方法が全く違ってきます。

家でリラックスしたい時に使用するアロマオイルとは違うものを使用することが多く、作用や効果で選んでいきます。

また精油(エッセンシャルオイル)をキャリアオイルなどで希釈する時は1%ほどで調整することがほとんどですが、スポーツアロマでは3%~5%ほどの高濃度で調整します。

場合によっては希釈せずに直接使用することもあります。アロマセラピーは香りの効果を重視し、リラクゼーションや癒しを求める傾向にありますが、スポーツアロマは身体のコンディションをよくするため直接筋肉へ働きかけるものとなっています。

スポーツアロマ第一人者の神崎貴子さん

スポーツをやっている人にスポーツアロマの良さを知ってもらいたいと語る神崎貴子さん。彼女が日本でスポーツアロマを広めるべく、「NPO法人日本スポーツアロマトレーナー協会」を設立して、その協会認定校第1号に「プレミナセラピストスクール」を開校しました。

そのきっかけとなったのが、2000年のシドニーオリンピック、2004年にはアテネオリンピックに施術者として参加したことだそうです。その時に海外ではマッサージにはオイルを使うことがスタンダードで、メダリストの多くはオイルマッサージでコンディションを整えていることを知りました。

そこにアロマの力を取り入れてみてはどうかと考えつき、日本スポーツアロマトレーナー協会を設立したのです。最初は、スポーツアロマを理解してもらうのはとても大変だったと言います。

しかし実際に施行してもらい、効果を実感できたアスリートたちから噂が広まり、今はスポーツ愛好家の一般の方にもスポーツアロマが浸透してきました。

2020年の東京オリンピックでアスリートの方たちをケアしたいと、トレーナーを志願する人も多く、彼女のスクールにはたくさんの生徒が訪れます。

[2] おすすめの精油(エッセンシャルオイル)

スポーツアロマで大事なものは、精油(エッセンシャルオイル)の選び方です。精油(エッセンシャルオイル)を、キャリアオイルと呼ばれる植物油などで希釈しアロマオイルにして、ボディマッサージ等で使用していきます。

精油(エッセンシャルオイル)ごとに、香りも違いますし効能も違ってきますので、どんな症状に使用したいのかということを考えて選んでいくようにしましょう。

今回は 特にスポーツアロマ向きの精油(エッセンシャルオイル)をご紹介いたします。

ウィンターグリーン

鎮痛作用に特化した精油(エッセンシャルオイル)です。というのも、整形外科などで処方される鎮痛剤には「アセチルサリチル酸」という人工的に作られた合成物質が含まれています。

これが消炎鎮痛に役立ってくれるのですが、ウィンターグリーンに含まれる「アセチル酸メチル」はアセチルサリチル酸と同じものなのです。天然の成分からこの効果が得られるなんてとてもすごいですね。

鎮痛作用がパワフルなので、刺激性も強いため、アロマセラピーでは用いられることは少ないです。原産国は中国やカナダとなっています。

ペパーミント

ミントの品種は多くありますが、ペパーミントは昔から使用されてきた歴史があります。お菓子や、歯磨き粉などの香りづけとして有名です。ペパーミントには、身体を冷やすという効能があるため、スポーツを行った後に使用されます。


疲労した筋肉に対して、冷やす行為が効果的な場面が多く、筋肉痛や打ち身などの症状の時に効果を発揮してくれます。

スパイクラベンダー

原産国はフランスやスペインで、標高の高い海辺などの環境を好みます。ラベンダーも種類は多くありますが、スパイクラベンダーは、通常用いられることが多い真正ラベンダーと比べると、カンファー系のスーッとする香りが特徴的です。

効能としては、硬くなった筋肉を緩めてくれる作用があります。筋肉が固いと、パフォーマンスが発揮できませんので、筋緊張をほぐす必要があります。また、精神面での緊張をほぐしてくれる効果も期待できます。

スイートマジョラム

こちらは温める作用を持つ精油(エッセンシャルオイル)で、冷え性の女性などにも愛用されています。血行促進や加温作用は、筋肉痛・筋肉疲労の緩和や鎮痛・鎮静作用も期待できます。また、自律神経調整作用もあることから、試合前の緊張からくる自律神経の乱れにも役立ちます。

レモングラス

レモングラスは熱帯に分布するハーブの一種です。原産地のインドでは昔から伝統医学で用いられてきました。

現在は料理の香りづけなどによく使用されています。効能としては、乳酸排出効果があるため、筋肉痛予防にとても期待ができます。運動後にふくらはぎなどのマッサージに使用すれば、筋肉を柔らかくすることもできます。

ジュニパー

ジュニパーはデトックス作用が期待できる精油(エッセンシャルオイル)です。身体に溜まりがちな疲労物質を速やかに排出してくれます。

そしてウッディな香りが気持ちを穏やかにします。また、ジュニパーは人類が最初に利用した植物とも言われていて、古い歴史を持っています。

[3] スポーツアロマを実践してみよう

トップアスリートだけでなく、スポーツ愛好家の方や、ちょっとしたスポーツイベントの時などでも、スポーツアロマは気軽に行うことができます。

先ほどご紹介した精油(エッセンシャルオイル)の効能と、使用の仕方さえ覚えてしまえば、自分だけでなく周りの方にも施してあげることができます。

オイルでマッサージ

スポーツアロマで基本となってくるのはマッサージです。運動前後に行うことでケアができます。やり方を覚えればセルフでマッサージができるようになります。

走ることがメインになる時は、ふくらはぎや足の大腿部など大きな筋肉をマッサージしましょう。運動前は手のひら全体でオイルを擦り込んでいく方法がおすすめです。末端から身体の中心へすばやく塗り込んでいくことで、体温をあげて筋肉をほぐすことができます。

また、運動後は筋肉を掴んでもみほぐす方法が適しています。手のひらと指を使い、筋肉を掴んで老廃物を流すようにマッサージします。運動前後のマッサージには滑り心地の良いオイルを使用してみましょう。

●スポーツ前
ローズマリー3滴+スパイクラベンダー3滴

●スポーツ後
ラベンダー1滴+ジュニパー2滴+グレープフルーツ3滴

●クールダウン
レモングラス1滴+ペパーミント2滴+ラベンダー3滴

≪作り方≫
希釈用のグレープシードオイルを30ml用意します。そこへ精油(エッセンシャルオイル)を6滴混ぜ合わせて保存用の瓶に入れて完成です。使用期限は3ヶ月程です。

≪使い方≫
運動の前後のマッサージに使用してください。運動後はとくに筋肉を使ったと思うところへ揉み込んでください。腰や背中にも使用できます。

お風呂でゆっくり疲労回復

運動後の入浴時間をスポーツの時間に使うこともできます。シャワーだけで済まさずに、湯船につかることで、アロマバスで疲労回復が可能です。

肌から浸透した精油(エッセンシャルオイル)の効能が筋肉に働きかけることはもちろん、香りで心も癒すことができます。

ただグレープフルーツなどの精油(エッセンシャルオイル)は光毒性があるので、屋外へ出る時などはマッサージオイルを拭き取り日焼け止めもしっかり塗るようにしてください。

●疲労回復に
マンダリン2滴+ジュニパー3滴

●筋肉痛予防に
ラベンダー2滴+ローズマリー3滴

●スポーツ後のリラックスに
ゼラニウム1滴+スイートマージョラム2滴+オレンジ2滴

≪作り方≫
天然塩大さじ2杯に精油(エッセンシャルオイル)を5滴ほど加えて混ぜます。入浴の直前に浴槽に入れて攪拌すれば手軽にバスソルトとして使えます。

≪使い方≫
ぬるめのお湯でゆっくりと入浴する時に使用しましょう。39℃くらいがおすすめです。

急性症状のケアもできる

打ち身や擦り傷切り傷など、運動中のアクシデントはよくある事です。そんな時もアロマの力でケアすることが可能です。代表的なものとして、冷湿布の作り方をご紹介いたします。ただし、痛みが続く場合や腫れが引かない場合には、医療機関を受診するようにしてください。

≪準備するもの≫
・精油計3滴
・氷水
・フェイスタオル
・洗面器

≪作り方≫
洗面器に氷水と精油(エッセンシャルオイル)を入れます。そこにフェイスタオルを浸し、水面に浮いている精油(エッセンシャルオイル)を染み込ませます。

≪使い方≫
浸したフェイスタオルを絞り、患部に当てておきましょう。

≪症状別にみるオススメの精油≫

●打ち身
ラベンダー、ゼラニウム、ペパーミント、ティートリー、サイプレス

●捻挫
ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、カモミールローマン/ジャーマン、パイン

●切り傷、擦り傷
ラベンダー、フランキンセンス、ゼラニウム、ティートリー、サイプレス、ミルラ

●日焼け
ラベンダー、プチグレン、ゼラニウム、ティートリー、カモミールローマン/ジャーマン

[4]スポーツを楽しむために、スポーツアロマを取り入れてみては?


身体を動かすことが好きな方や健康を維持するために、ウォーキングやジョギング、筋トレなどを行う人は増えています。

そんな時に筋肉痛に悩まされたり、思ったようにパフォーマンスを発揮できないとモチベーションも下がりますし、逆に健康を損なってしまうことがあります。

そうならない為にしっかりと怪我などの予防をすること、運動後は身体のケアをすることが大切になります。スポーツアロマはスポーツを楽しみたい人すべてに役立つ最先端の身体のケアとなっています。

※アロマオイル(精油/エッセンシャルオイル)を使う際の注意点
アロマオイルは医薬品ではないため、「治療」できるものではありません。ここに掲載されている内容は精油の効果効能、心身の不調改善を保証するものではありません。予めご了承ください。症状がひどい場合は医療機関を受診することをおすすめいたします。実際にアロマの香りに癒されるという方はたくさんいます。自分の体の状態や気分に合わせて上手に取り入れてくださいね。

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