【医師取材】20代女性も要注意!体臭「ミドル脂臭」の原因と対策
「ミドル脂臭」という言葉をご存知ですか?「ミドル脂臭」とは、頭頂部から後頭部、うなじ辺りを中心に、古くなった油のような、古いろうそくのような…なんとも不快なニオイを発する体臭のことです。その原因から対処法まで専門医に詳しく伺ってきましたのでご紹介します。
2024年02月21日更新
記事の目次
若い女性も注意!?「ミドル脂臭」とは
ミドル脂臭とは、頭の後ろから首にかけて発生する、使い古した油のような強烈なニオイです。
一般的に40代頃から発生しやすいという特徴があります。
おじさん世代だと気を付けたいようなイメージがありますが、実は男女ともに発生するため、注意が必要です。
しかも若い方から年配まで、世代は関係ありません。
ミドル脂臭の原因物質は、汗をかいた時に出る疲労物質「乳酸」です。
乳酸が皮膚の上にある常在細菌(ブドウ球菌)に代謝・分解されることで「ジアセチル」という成分に変わります。
この「ジアセチル」という成分が、強くて不快なニオイとして発生したものを「ミドル脂臭」と呼ぶのです。
なぜ「ミドル脂臭」と呼ぶの?
30代半ば〜50代半ばのミドルと呼ばれる世代の男性に、このニオイの悩みが多かったため「ミドル脂臭」と化粧品メーカーのマンダムさんが名付けられたのですが、実は女性にも出ます。
身体の中に乳酸がある人なら、誰でも発生するニオイになります。
男女世代問わず発生するニオイ
男女関係なく全世代だれでも「ミドル脂臭」は出ますが、ミドル世代の男性は年齢的にも立場的にも、緊張する場面が多く、体力的にも疲れる機会が多い。
つまり緊張性発汗で乳酸を発する汗をかく機会が多いということもあり、一番ニオイを発生しやすいと言われています。
「加齢臭」との違いは?
「ミドル脂臭」の原因物質は「ジアセチル」ですが、「加齢臭」は「パルミトレイン酸」という脂肪酸が酸化して「ノネナール」という成分になって発せられるニオイになります。つまり2つは全く異なるニオイ成分です。
「ノネナール」は枯れ草のような特徴的なニオイで、単体ではそんなに不快なニオイではありません。
この「ノネナール」と「ジアセチル」が一緒になると、よりニオイが強くなり、より不快なニオイへと変化するのです。
ですから、「ジアセチル」を抑えることで、「加齢臭」も「ミドル脂臭」のニオイも抑えることができます。「ジアセチル」対策は、他の体臭対策にもつながりますので、しっかりとケアすることをオススメします。
ミドル脂臭の原因とは?
強力なニオイ成分「ジアセチル」
汗をかいた時に出る疲労物質「乳酸」が常在細菌と混ざり合うことで、「ジアセチル」というニオイ成分に変化して発生したものが「ミドル脂臭」なのですが、この「ジアセチル」のニオイ成分は思いのほか強力です。
また、空気中に広がりやすい特徴もあり、よく「使い古した油のようなニオイ」という表現もされています。昔は「つわり臭」という言い方もされていたぐらい、とくに女性が不快に感じるニオイです。
少量でも強烈なニオイを発生
例えばワインを製造する時、ワイン樽の中には「乳酸」がうまれます。
「乳酸」だけならば酸味なので全く問題はないのですが、もしも樽の中に細菌が混入していた場合、その細菌が「乳酸」を分解して「ジアセチル」に変わってしまいます。
この「ジアセチル」がほんの少量でもワインに混じってしまうと、樽そのもの全部がダメになってしまうのです。それぐらい強烈なニオイ成分だというわけですね。
原因1:生活の乱れやストレスによる「乳酸」の発生
・ストレスによる緊張性発汗や精神性発汗
ミドル世代は仕事や家庭でのストレスも多く、緊張性発汗や精神性発汗がおきやすいのですが、これがニオイ発生の大きな根源になります。
精神性発汗というのは、冷や汗のようにドッと出てくる汗なのですが、このドッと出る汗には「ミドル脂臭」の原因となる「乳酸」が多いのです。
・睡眠不足や生活の乱れ
「乳酸」はゆったりと酸素を供給して活動している時にはあまり出ません。
しかし、疲れがたまっていたり、睡眠不足だったり、緊張が続いたりした時などは「乳酸」が出やすくなります。
すると、汗と混じって「ジアセチル」となり、「ミドル脂臭」発生に繋がるのです。
原因2:生活習慣による汗腺機能の衰え
・エアコン漬けや運動不足の女性もご用心
疲労や緊張した時以外にも、汗腺を使っていない人や汗腺機能が弱くなっている人も「ミドル脂臭」発生の確率が高まります。
毎日エアコン漬けの人や運動不足の人など、汗をかく習慣のない人は汗腺機能が衰えていることもしばしば。
汗腺機能が弱い人は「乳酸」も出やすく、結果として「ミドル脂臭」を発してしまうんです。
そう考えると、中高年の男性だけでなく、オフィスで冷房漬けになっている運動不足の若い女性も注意が必要ということに繋がりますね。
ミドル脂臭の対策はどうすればいいの?
日常生活の乱れを改善すること、睡眠をしっかりとる、規則正しい生活をすること。そしてストレスをためこまないこと。これが一番大切です。
それを整えたうえで、身体の動きに気をつけ、汗腺機能の改善を目指すとよいでしょう。
対策1:ストレスをためない生活を
緊張性発汗や精神性発汗を防ぐために、ストレスのない生活を心掛けましょう。
身体の動きに関して言えば、無酸素系の動きは「乳酸」が出やすくなりますので、有酸素系の動きをするように心掛けると良いでしょう。
対策2:エアコンに頼らず、汗腺機能の改善を目指す
エアコン漬けの生活では、汗腺機能が弱まるのは当然です。汗腺機能を高め、能動汗腺を増やすには「汗腺トレーニング」がオススメ。
お風呂で行なうのですが、高温浴(43度くらい)のあと微温浴をして能動汗腺を増やすんです。詳しくは僕のHPや本にも詳しく載っているから参考にしてみてください。
汗腺機能がアップする「汗腺トレーニング」
1.まず、高温浴です。浴槽にかなり熱めのお湯(43度くらい、火傷をしないくらい)を少なめにはって、両手(ひじから下)と両足(ひざから下)を10分~15分くらいあたためます。この時、浴槽にイスをいれ前かがみになると効果的です。
2.次は、微温浴です。1で入っていた熱めのお湯にぬるいお湯を足して、今度はぬるま湯のお湯に全身でつかり、リラックスして、高温で高まった交感神経を安定させるのです。この時、お湯に酢をいれるとより効果的です。
3.お風呂からあがったら、十分水分をタオルで拭いてから、すぐに服を着ずに、そのまま汗を乾燥させます。目にみえない汗が汗腺から出やすくなり、機能を高めることができます。
食べ物や日常生活からミドル脂臭を防ぐ
食べ物はアルカリ性食品がおすすめ
食べ物に関していえば、ニオイ物質は酸性ですから、アルカリ性の食べ物を食べると良いでしょう。例えば、梅干し、海藻類、酢の物など、アルカリ性食品と呼ばれる食品がオススメです。
濡らしたタオルが効果的
ニオイ対策には「ミドル脂臭」のニオイを取るデオドラント剤を用いるのも良いでしょう。ニオイ物質は全て水溶性です。ですから、汗を拭き取る場合、乾いたタオルよりも、濡らしたタオルで拭き取る方が効果的です。
手作りのニオイ消し「重曹スプレー」
僕がよく勧めているのは、手作りの重曹スプレーです。重曹を水に溶かして、気になる部分へスプレーしてみてください。こちらは予防ではなく、即効性のニオイ消しになります。
その重曹水に「ハッカ油」を数滴たらして入れると、良い香りですし肌もスキッとしますから、マスキング効果的にもいいですよ。
普通にドラッグストアで買えるものばかりですから、「ミドル脂臭」対策としてぜひ試してみてください。
ミドル脂臭に関連するよくある質問
最後に、ミドル脂臭に関連するよくある質問にお答えします。
油臭い体臭は20代でもしますか?
20~30代の若い世代でも、脂くさい体臭が発生することはあります。
これは、糖質の多い食生活や劣化した油のとり過ぎなどによって、皮脂が過剰分泌・酸化し、発生する「ぺラルゴン酸」が悪臭を出すためです。
このようなニオイは「早期加齢臭」とも呼ばれ、20代であっても悩まされることがあります。
早期加齢臭は、生活習慣の乱れから発生することがあるため、規則正しい生活を心がけましょう。
ミドル臭ってどんな臭い?
ミドル臭は、ミドル脂臭とも呼ばれており「使い古した油」のような強烈なニオイがします。
ニオイを発する部位は、頭の後ろから首にかけてです。
ミドル脂臭の原因は、汗を作り出す汗腺の働きが低下すること。すると汗の中に乳酸が分泌されやすくなります。
皮脂常在菌によってこの乳酸が分解されると「ジアセチル」という不快なニオイ成分が排出されてしまいます。
ミドル脂臭は何歳までですか?
ミドル脂臭は、30代半ばから50代半ば頃まで続くと言われています。
体臭は年代によって変化するのが特徴です。
20代でもっとも強くなるのが汗臭やワキ臭。
35~45歳で強さがピークとなるのがミドル脂臭。
50代以降に強くなるのが加齢臭です。
特に40代は、3種類すべてのニオイが混在することがあります。中でも強いのがミドル脂臭です。
ミドル脂臭を治す方法は?
ミドル脂臭の対策の基本は、頭皮のアブラを洗い流すこと。
さらにニオイの発生まで抑えられるような、ミドル脂臭対策用のデオドラントシャンプー・ボディウォッシュで、後頭部や首の後ろをしっかり洗いましょう。
以下のような生活習慣を心がけることも大切です。
- 湯船に入る
- 十分な睡眠をとる
- 梅干しや酢の物などでクエン酸を摂取する
- 野菜、海藻、きのこ類などの「アルカリ性食品」を積極的に摂るようにする
- ビタミンCやビタミンE、ビタミンA(β-カロテン)が多い食品を摂る
- 全身のマッサージで血行を良くする
- 禁煙
一番の予防は、汗の出やすい体質に改善すること
汗の出やすい体質になるには、やはりお風呂にゆっくりつかることです。血行が良くなると身体に酸素を供給できるわけだから「乳酸」も自然に排出してくれますからね。
それから、お風呂は入った後の過ごし方もポイントです。お風呂からあがって急に身体を冷やさないでください。まずはちゃんと汗を蒸発させることが大切です。
扇風機やうちわで扇いだりして、自然なカタチで平熱に戻してあげること。急にエアコンの部屋に入って冷やしたら、身体の中に熱がこもったままになってしまうので、熟睡もできませんし、寝汗の原因にも繋がります。
また、更年期の女性もホットフラッシュといってドッと出る汗がありますが、この汗も精神性発汗の一種です。更年期多汗症は「ジアセチル」が多いのでニオイ発生にも気をつけてください。
■取材協力:五味クリニック
■取材・文/たなべりえ