香りの本場フランスで昨年出会った、“一嗅ぎ惚れ”香水たち♡
私が暮らすパリでは数々のフレグランスメゾンがひしめき合い、香り好きにとってパラダイスのような場所でもあります。特に2019年は、有名ブランドの新作香水だけでなくニッチな香りも多く発表されました。一時的に低迷していた香水業界がフランス全体で盛り上がっているのを実感した年でもあります。そんな香水のメッカ・パリで昨年“一嗅ぎ惚れ”した、運命の香りをご紹介します!
2020年01月10日更新
記事の目次
[1]匂いに寛容なフランス人
香水の本場といえばフランス。パリの中心地に出向くと、プチプラブランドからトップメゾンまで実にさまざまなフレグランスが並んでいるのを見かけます。
私がパリに移住してからもうすぐ2年が経とうとしていますが、移住の決め手となった理由のひとつに“香水”があることは間違いありません。
香水好きだった母親の影響を受け、十代で初めて身にまとった香りが『クリスチャン・ディオール』の「タンドゥル・プワゾン」でした。
「タンドゥル・プワゾン」の日本語訳は“優しい毒”。そのタイトルと香りの深さに感銘を受けてから約20年余り、香水は私にとって生活の一部となっていました。
フランス人と結婚したことで、慣れないフランス文化に驚かされることも多々あります。ただ香水に関してフランス人は本当に寛容で、老若男女問わず身につけています。
ライトな香りよりも濃厚でセクシーな香りを好み、はっきりと「異性にアピール」するアイテムとしてみなが認識しているんです。
自分の好きなモノ・コトが受け入れられる世界では、自分自身の可能性も広がりますよね。
2019年は多くの香水ブティックに足を運び、本場のエキスパートたちから学ぶことができ、私の香水人生がやっと開花した年でもありました。
そんな香水の本場・パリで昨年“一嗅ぎ惚れ”した、運命の香りを5つご紹介します!
[2]フランスならではの香り5選
NO.5
フォアン・フレッシュモン・クープ/Oriza.L.Legrand(オリザ・ルイ・ルグラン)
『Oriza.L.Legrand(オリザ・ルイ・ルグラン)』は、マリーアントワネットが愛した由緒ある“香水屋さん”です。
なんと1720年から続くフランス最古の香水ブランドなんです。
今も昔も香料は全て天然のものを使用。100%フランス国内で香りを製造していて、パリジェンヌの間では“知る人ぞ知る”香水なんですよ。
当時ムスクなどの動物性香料が流行していたベルサイユ宮殿で、マリーアントワネットだけはそんな常識を覆し、『Oriza.L.Legrand(オリザ・ルイ・ルグラン)』のフローラル系の香水を好んで身にまとっていたんだそう。
彼女はまさに時代の先を行く感性の持ち主だったようですね。
トップノート:アンジェリークの花、スターアニス、ミント
ミドルノート:クローバー、クラリセージ、ニュームーンヘイ(新月の日に採れた干し草)
ラストノート:ホワイトムスク、アイビー、干し草
1886年に発表された「フォアン・フレッシュモン・クーぺ」は、柔らかな石鹸の香りとフレッシュなグリーンブーケに包まれ、深呼吸したくなるような幸福感にあふれた香りです。
クラシカルな佇まいのなかにモダンなテイストを加えた、清潔感の漂う逸品!
可愛いさとヴィンテージが入り混じったボトルデザインにも虜になってしまいそうですよね♪ 古き良き時代の“美人香水”と言えるでしょう。
私が虜になったのはそのクラシカルな香りもさることながら、香水ボトルの美しさです。
一時期は廃業寸前だった『Oriza.L.Legrand(オリザ・ルイ・ルグラン)』ですが、パリのオペラ座近くのブティックで“原点回帰”を目指し、2012年に見事に復活しました。
由緒あるブランドにもかかわらず、温かくてフレンドリーなブティックアドバイザーたちも魅力です。定期的に通いたくなる素敵なブティックです♪
NO.4
フレンチ・レザー/MEMO(メモ)
『MEMO(メモ)』は日本ではまだあまり知られいない、パリ発の大注目フレグランスブランドです。
ブランドコンセプトは香りで「旅」すること。世界中の魅力的な都市にインスパイアされた香水を発表し続けています。
『MEMO(メモ)』の名前の由来は“想い出”の意味の“MEMORY”からきているそうです。
希少性が高い天然香料を使用していて、ストーリー性にあふれた香りのラインナップが魅力です。
調香師のクリエイションの最高峰に触れることができる、香水界のオートクチュールと言って良いかもしれません。
『MEMO(メモ)』のアイコン的な香り「フレンチ・レザー」は極上の素材だけが持つエネルギーを、確かな技術とセンスで調香した逸品。
静かな冬景色のなか、澄み切った空気を感じながらパリの街並みを闊歩している現代女性…そんな光景が目に浮かぶようなフレグランスです。
パリで暮らしている私でさえ、「これぞパリのイメージ!!」とうなった香り。
トップノート:ライム、ピンクペッパー
ミドルノート:スエード、ローズ、クラリーセージ
ラストノート:杉、ホワイトムスク、ベチバー
漂うのは素敵な革のハンドバッグの内側のスエードの香りと、やさしい薔薇の花の香りです。
レザーが効いていてフェミニン過ぎないので、ユニセックスとしても使用できます。
NO.3
リトル・フラワー/regime des fleurs(レジーム・デ・フルール)
出典 instagram.com/regimedesfleurs/
「アート、自然、歴史が息づく香り」がテーマの香水ブランド、『regime des fleurs(レジーム・デ・フルール)』は、2014年にロサンゼルスで誕生したラグジュアリーなフレグランスメゾンです。
フレンチブランドではありませんが、パリでは飛ぶ鳥落とす勢いで広まりつつあります。
今年オープンした大型デパート、ギャラリーラファイエット2号店でのプロモーションを皮切りに、パリの香水専門セレクトショップにて続々と取り扱われています。
「リトル・フラワー」は、アメリカ人女優兼モデルのクロエ・セヴィニーをイメージした香り。
彼女は90年代・ガーリースタイルのファッションアイコンとして数々のファッションブランドのミューズとなりました。
ガーリー、といっても決して媚びた印象はなく、透明感のある存在と飾らない彼女のキャラクターに誰もが魅了されたものです。
トップノート:アールグレイ、カシス
ミドルノート:ピオニー、オスマンサス(金木犀)、ローズ
ラストノート:パロサント(樹木)、スイカズラ
もともとクロエ・セヴィニーのファンだったこともありますが、こんなに知的なフローラルノートを経験したのは生まれて初めてで、記憶に残る衝撃的な出会いでした。
「リトル・フラワー」のヒロインとなる香りはローズです。
ですが、そのローズにたどり着くまでの道のりが結構長いのです。まるでヴェルサイユ宮殿の庭園に迷い込んだかのような、神秘的で高貴な香り立ちです。
脇役なのに存在感のあるピオニー(芍薬)とオスマンサス(金木犀)の香りから主役のローズにゆっくりと変わり、最後にパロサント(樹木)の香りで落ち着きます。
肌と馴染んだあとラストノートでほんのちょっと官能的な香りに変わるのですが、安易なセクシーさではなく、洗練されていて好感が持てます。
トップノート、ミドルノート、ラストノートの3段階がこんなにもゆっくりと、はっきりとしている香水に出会ったのも初めてでした。
新進気鋭の香水ブランド『regime des fleurs(レジーム・デ・フルール)』から今後も目が離せません。
NO.2
ウッド・イモーテル/BYREDO(バイレード)
日本でもファンが多い、スウェーデン発のニッチ香水ブランド『BYREDO(バイレード)』。
もちろんフランスでも大人気で、特にファッショニスタやクリエイターの間でトレンドのフレグランスブランドです。
創業者のベン・ゴーラム氏はカナダ人とインド人のハーフという出自を持っています。お父様の仕事で世界中を移動し、最終的にスウェーデンに居住しました。
このブランドの香水は圧倒的に他と違います。万人受けしてたまるか!という気概が香りから読み取れます。
個人的にはインドにルーツがあることがポイントです。インドの天然香料って、良くも悪しくも純度100%で、たまにワイルド全開なものも。
ところがインド産に欧米のフィルターを通すと、とたんに洗練されて垢ぬけた香りに変身するから不思議なんです。
創業者がインドに並々ならぬ想い入れがあるので、当然香りもオリエンタルです。
私がモダン・オリエンタルの傑作!と思ったのが『BYREDO(バイレード)』の「ウッド・イモーテル」。
トップノート:カルダモン、ローズウッド
ミドルノート:パピルス、パチョリ
ラストノート:モス(苔)、タバコの葉
成分だけ見ると王道のオリエンタルノートです。ただ創業者のゴーラム氏、これ以外に本物のお寺の香料を配合しているようです。
それが、インド最古のサンスクリット語の聖典に登場する、古代からインセンスに用いられていた聖木「OUD(ウッド)」です。ネーミングにも使用されていますね。それはそれは重厚でミステリアスな香りです。
ところでインドの寺院って、厳しい規律と階級が混在するような“禁じられた”イメージがありませんか?実はその神秘的なエッセンスが香りから漂ってくるのです。
ただ、数十分後には肌の香りと絶妙に馴染んで、なんともなまめかしいパウダリーノートに変わります。厳しい規律に耐えかね、少し聖域を犯してしまった人間臭さも表現してます。
人って煩悩と理性の間を行ったり来たりしながら、常にちょうど良い落としどころを自分で見つけて生きてると思うんです。でもたまに煩悩と理性の狭間にはさまってしまって抜け出せず苦しむときもある。
実はこの「ウッド・イモーテル」、人間の崇高さと自堕落さをも香りで表しています。
フランスにおいて香りの職人、芸術家と呼ばれる調香師は数多く存在しますが、ニッチフレグランス界にて『BYREDO(バイレード)』の存在感は頭一つ抜きんでていると思います。
“百聞は一嗅にしかず”、ぜひひと嗅ぎしてほしいフレグランスです!
NO.1
レ・ゼクスクルジフ・ドゥ・シャネル・31・リュ・カンボン/CHANEL(シャネル)
出典 elle.fr/Personnalites/Coco-Chanel
“世界一の名香”と言われて久しい『CHANEL(シャネル)』の「NO.5 (ヌメロ・サンク)」。私の香水人生において、ひれ伏してしまうほどの威力を持つ香りはこれしかありません。
選ばれた人しか「NO.5 (ヌメロ・サンク)」を身にまとってはいけないような、絶対的な存在感とオーラを感じていました。
ココ・シャネルが放った「香水をつけない女性に未来はない」との名言は、香り好きではなくとも一度は聞いたことがあるフレーズではないでしょうか。
そして「NO.5 (ヌメロ・サンク)」が誕生してからまもなく100年が経とうとしています。
トップメゾンのデザイナー兼起業家として後世に名を残したココ・シャネルは、パリのカンボン通りに特別な思い入れがありました。
それもそのはず、シャネルの第一号店はカンボン通り31番地から始まり、ブティックの上階にはココ・シャネル自身のアパルトマンも構えていたのです。
『CHANEL(シャネル)』の全てがこの場所から始まっていて、現在でも本店が存在するんですよ。
『CHANEL(シャネル)』の三代目専属調香師であるジャック・ポルジュが2016年に発表した力作の香水が、カンボン通り31番地の名を冠した「レ・ゼクスクルジフ・ドゥ・シャネル・31・リュ・カンボン」です。
トップノート:ベルガモット、ベチバー
ミドルノート:ローズ、アイリス、イランイラン
ラストノート:シプレー、パチョリ
彼が目指したのは、もしココ・シャネルが21世紀に生きていたならば「これが私の香り!」と歓喜するものを完成させることでした。
『CHANEL(シャネル)』の香水は敷居が高い、匂いが強い…との印象を持っている方も少なくないかもしれません。ところがこの香りからは古典的な香料が排除されているそうです。
現代のあらゆるシーンで使え、新世代の「NO.5 (ヌメロ・サンク)」との呼び声が高い「レ・ゼクスクルジフ・ドゥ・シャネル・31・リュ・カンボン」。
この香水に出会ったのが昨年の後半でしたが、一瞬で恋に落ちた香りです。
「NO.5 (ヌメロ・サンク)」のキャラクターを残しつつ、しっかり“今”も捉えていて、どこか深層心理に訴えかけるような“魔性のフレグランス”と言えるでしょう…!
ゴシック建築のような深みがあるのにまったく不快感を与えません。
『CHANEL(シャネル)』の歴史と未来を一度に感じさせてくれる逸品です。オンの時もオフの時もこの香りを身にまとえば、確実に女性の美が格上げされることでしょう!
フランスが世界に誇るトップメゾン『CHANEL(シャネル)』から新たな名香を発見でき、また一つ宝物が増えた気持ちになりました♪
[3]運命の香りに巡り合うために
香水は人によって香り方が異なるので、お気に入りの香りを見つけるのに何年もかかることもありますよね。
私は香水の本場・パリで暮らしているため、フレグランスの数と情報が桁違いに多く、香り選びに迷うこともありました。
昨年はブティックに足しげく通い、アドバイザーのアドバイスも参考にしながらいただいたサンプルで2、3日過ごし、やっと「これだ!」と思う香りに巡り合えたのです。
気になった香りは実際にいろいろ試して、ぜひご自分にぴったりのものを見つけてくださいね!
運命の香水に巡り合えますように♡