【管理栄養士監修】亜鉛不足で体臭はきつくなる?亜鉛の効果と気をつけたい過剰摂取とは
亜鉛と聞くと精力アップや不足すると味覚障害が起こるとイメージする人も多いのではないでしょうか?しかし、亜鉛には体臭を抑える効果が期待できると言われています。ただし、摂取の仕方を間違えてしまうと逆に体臭が悪化してしまうこともあります。そこで、今回は亜鉛と体臭の関係について解説するとともに亜鉛不足・過剰摂取に陥らないための方法をお伝えしていきます。
2024年02月19日更新
記事の目次
亜鉛とは?
亜鉛はたんぱく質の合成や糖代謝、骨の発達に関与する体にとって必須のミネラル16種類のうちの1つになります。その95%以上は細胞の中に存在しており、100種類以上の亜鉛含有酵素としてさまざまな働きをしています。
亜鉛の所要量は鉄とほぼ同じと言われていますが、尿や汗の中に排出されてしまう量は鉄の10倍も多いため、運動やダイエットをすることで不足しがちになりやすいです。
ただし、亜鉛はいろいろな食べ物に含まれている栄養素でもあるので、基本的には通常の食事で不足に陥ることはほとんどありません。
しかし、この亜鉛は不足しても過剰摂取しても私たちの体の中で健康障害が出てしまうので、少し注意が必要な栄養素でもあります。
亜鉛不足で生じる体の変化
必須ミネラルでもある亜鉛が不足してしまうと亜鉛欠乏症になってしまいます。これは亜鉛の含有量が少ない食べ物ばかり食べていたり、食物繊維を摂りすぎていたり、鉄や銅を過剰摂取したりした時に生じやすいと言われています。
亜鉛不足により引き起こされる一般的な症状とは?
亜鉛欠乏症によって生じる症状には下記のものがあります。
- 味覚障害(舌に存在して味を感じる細胞の味蕾が減少して味を感じることができなくなる)
- 物忘れが激しくなる
- 免疫力が下がる
- 貧血
- 性能力が低下する(精子が減少したり無月経になったり)
- 視力が低下する
- 脱毛や薄毛になりやすい
- 傷の治りが遅くなる など
あまり注目されていない栄養素ではありますが、不足してしまうとさまざまな健康障害が出てしまうのです。
亜鉛不足で体臭がきつくなる原因
亜鉛欠乏症による症状は上記で説明しましたが、亜鉛欠乏によって生じると言われている体臭の悪化はピロルリアという病気による亜鉛の減少や貧血が原因で起こると言われています。
ピロルリア
別名ピロール尿症とも呼ばれています。尿の中にピロールと呼ばれる異臭を放つ黄色液体の化学物質が検出される病気になります。
重度の場合はこのピロールの量が通常の人の5~10倍も含まれるようになり、これが原因で体臭や口臭が発生します。
また、この病気になるとピロールが亜鉛とビタミンB6と結合して尿として排出されてしまうので、亜鉛不足を引き起こしてしまう引き金にもなるのです。
また、ビタミンB6も一緒に排出されることから不足してしまうと精神力も弱り、心の病も発症しやすいと言われています。ピロール自体も異臭があるため、量が増えることで体臭が強くなる原因の1つになるのです。
貧血
貧血と聞くと鉄分不足をイメージする人が大半でしょう。貧血は私たちの体の隅々まで酸素をしっかり運ぶのに必要なヘモグロビンが減少するために起こります。
そのため、体が酸欠状態になってしまいます。そんな時に汗をかくと、汗をかくためのエネルギーが酸素を使わない解糖系という体のシステムで作られて一緒に乳酸も発生します。
そして、この乳酸が汗の中に増えると、つられてアンモニアも増えてしまうので、においの強い汗となってしまい、体臭の原因になるのです。
この2つの病気の改善には亜鉛と鉄分が含まれた食事を取ることがおすすめになります。
亜鉛の効果とは?
私たちの体の中で様々な働きをしている約300種類の酵素の働きを活性化するのに関与して亜鉛ですが、十分に摂取することで体に取って嬉しい効果を発揮してくれるのです。そして、間接的にはなりますが体臭や口臭の予防・改善にも効果が期待できるのです。
貧血予防
鉄分不足が原因と思われがちですが、実は亜鉛不足でも生じてしまうのです。亜鉛は赤血球を作るのに重要な成分であり不足すると亜鉛欠乏性貧血を発症します
そして、貧血により全身が酸欠状態になると代謝が低下して、乳酸やアンモニアが体内に蓄積してしまい、それが汗や呼吸として排出される時に悪臭となってしまうのです。
新陳代謝の活性化
亜鉛は新陳代謝を活発化してたんぱく質の代謝を促進します。そのため、肌のターンオーバーがしっかりと行われることで健康な皮膚が保たれます。
しかし、亜鉛不足になるとターンオーバーも乱れてしまい、皮脂が過剰分泌されて、その皮脂の酸化により酸化臭が発生してしまうので、これが体臭となってしまうのです。
抗酸化作用
亜鉛は体内の活性酸素を分解する働きのあるSOD(スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)酵素をサポートします。また、ビタミンAの抗酸化作用を活性化させる働きもあり、生活習慣病の予防やアンチエイジング効果に期待できます。
体内での活性酸素の増加は血行が悪くなったり、皮脂の酸化で過酸化脂質が増加したり、内臓の機能が低下したりすることで体臭を引き起こしてしまうのです。
アルコールの分解を助ける
アルコールの飲みすぎは肝臓での処理が間に合わなかったりアルコールが分解されたりで体臭の原因になります。亜鉛はアルコール分解するのに必要であるアルコール脱水酵素の材料になります。
そして、新しい細胞を作り出すサポートもするので、肝機能の働きを助けるのにも役に立つのです。そのため、亜鉛を不足させないことは体臭の改善につながります。
自律神経やホルモンバランスを整える
亜鉛は神経伝達物質やホルモンを作るのに関与する栄養成分でもあります。そのため、不足して神経伝達物質がしっかり作られなかったりホルモンバランスが崩れたりすると体内環境も崩れてしまい、便秘や消化不良、皮脂の過剰分泌、過剰な発汗などが引き起こされ、体臭や口臭が発生してしまう原因になってしまいます。
亜鉛で体臭予防・改善をするためには?
亜鉛は過剰摂取を気をつけるべき栄養素でもありますが、亜鉛は不足しやすい栄養素の1つでもあるので、食事の時に少し注意して食べることで亜鉛不足を引き起こさないようにしましょう。
また、植物性由来の亜鉛は動物性由来のものと比較すると吸収率が悪いと言われているので、ベジタリアンやビーガンの方はより意識して摂り入れるようにした方が良い場合もあります。
亜鉛を多く含む食べ物とは
亜鉛が豊富に含まれている食品は下記になります。
- 牡蠣
- 豚肉や鶏肉レバー
- 牛肉(肩、ひき肉、テール)
- うなぎ
- ほや
- 煮干し
- 卵黄
- 大豆製品
- チーズ
- ビーフジャーキー
- ごま
- カシューナッツ
- アーモンド など
亜鉛は特に動物性のものに豊富に含まれています。そのため、ベジタリアンやビーガンの方はごまやナッツ類を意識して取ることをおすすめします。
亜鉛の吸収率を高めるためにできること
厚生労働省の発表によると腸管からの亜鉛の吸収率は約30%であるので、食事で取っても体の中になかなかに吸収されない栄養素でもあります。そのため、亜鉛の吸収率を高める働きがある栄養素を一緒に取ることをおすすめします。
<亜鉛吸収率を高める栄養素>
- ビタミンA
- ビタミンC
- クエン酸
- 動物性たんぱく質
ビタミンAは一緒に摂ることで亜鉛の働きをアップしてくれます。ビタミンCとクエン酸を同時に摂ることはミネラルを包み込むキレート作用が促進されて亜鉛の体内への吸収率が高まります。
動物性たんぱく質は亜鉛の吸収率を高めるだけでなく、吸収を妨げる食物繊維やフィチン酸の影響を抑える働きもあるのです。
亜鉛の吸収を邪魔する食べ物とは?
亜鉛の吸収率を高める栄養素がある一方で、亜鉛の吸収率を邪魔する栄養素があるので食品を選ぶ際には注意が必要です。
<亜鉛の吸収を邪魔する栄養素>
- フィチン酸
- ポリリン酸
- 食物繊維
- タンニン
- シュウ酸
- カルシウム
- 過剰な鉄や銅
加工食品やレトルト・インスタント食品、外食にお世話になることが多い方は、食品添加物に使用されるフィチン酸やポリリン酸の働きで亜鉛の吸収率が低下してしまうので注意が必要です。
他にもフィチン酸は穀類や豆類を原材料とした食品にも多く含まれています。食物繊維は体に必要な栄養素ですが、亜鉛の吸収を阻害してしまいます。
通常、摂る分には問題ありませんが、健康食品やサプリメントなどで過剰摂取してしまい、亜鉛の吸収阻害をしないように注意する必要があります。
他にもコーヒーや紅茶緑茶などの苦み成分として含まれるタンニンや緑黄色野菜に含まれるシュウ酸などにも亜鉛吸収率を下げます。
そして適正量では問題ないのですが、カルシウムや鉄や銅の過剰摂取は亜鉛の吸収率を妨げて、亜鉛の過剰摂取が逆にそれの吸収率を妨げるのでバランスよく摂る必要があるのです。
亜鉛サプリメントは体臭に良い?
亜鉛だけに限らず基本的には食事から必要な栄養素を摂取できることが理想です。
しかし、亜鉛は食べ物のからの吸収率が決して高くなく、現代の食生活において亜鉛を食事だけで摂り入れるのは難しいという場合もあります。
そんな時には良質な原材料で作られたサプリメントを補助的に使用するというのは問題ありません。ただし、亜鉛は過剰摂取してしまうのも良くないのでサプリメントを飲む場合には注意が必要です。
亜鉛サプリメントを使用する場合の注意とは
亜鉛のサプリメントを使用する場合には気をつけていただきたいことが3つあります。
①空腹時に服用するのは避ける
亜鉛は吸収率の低い栄養素ではありますが、空腹時に服用すると体の中に入ってきた栄養素を全て吸収しようと作用して、一気に亜鉛が吸収されてしまうことで、気持ち悪くなったり嘔吐が促されたりしてしまう場合もあります。
②過剰摂取は避ける
亜鉛が吸収率が低い栄養素ということでしっかりと摂り入れたいとの思いから必要以上に摂取しようとしてしまうことがあるかもしれません。摂りすぎは逆に体の不調を引き起こしてしまうので、製品の1回規定量を超えて服用することはやめてください。
③質の良いサプリメントを選ぶ
亜鉛のサプリメントも今の市場ではいろいろなメーカーから販売されています。残念ながら中には、添加物がたっぷり使用されているものなどもあります。
そのようなものは服用することで体に負担をかけてしまう場合もあるので、もし、サプリメントを選ぶ場合にはしっかりと原材料の確認をしてから選びましょう。
亜鉛の過剰摂取は良くない?
基本的に食事からのみ亜鉛を摂取する場合には気にする必要はありません。しかし、気になる体臭を早く改善させたいという気持ちが強く、亜鉛不足を恐れるあまりにサプリメントを摂りすぎてしまう場合があるかもしれません。
亜鉛は不足すると健康障害が出ますが、逆の過剰摂取でも健康障害が出ます。
急性亜鉛中毒により、嘔吐や下痢、腹痛、頭痛、食欲不振、抜け毛や、肌荒れ、などの症状が現れてしまう場合もあるのです。
そのため、亜鉛は日本人の食事摂取基準で耐用上限量が定められている栄養素になります。耐用上限量はほとんどの人が摂取しても健康障害が起こる危険性がない上限量になります。
<亜鉛の耐用上限量>
- 成人男性 40~45㎎
- 成人女性 35㎎
この量を超えるには大きめの牡蠣を18個位食べないといけないので、一般的な食事内容と量であれば過剰摂取の心配をする必要はありません。
亜鉛の過剰摂取で逆に体臭はきつくなる
亜鉛の過剰摂取が続いてしまうと、ミネラルのバランスが悪くなり貧血が悪化してしまったり、胃や腎臓に負担がかかることで臭いの元となる老廃物が体の中に蓄積されてしまったりします。
その結果として、体臭や口臭がきつくなってしまうことがあるのです。
亜鉛についてよくある質問
亜鉛は、私たちの体にとって重要な役割を果たす必須ミネラルです。免疫機能の維持、傷の治癒、味覚や嗅覚の感覚など、様々な機能に関与しています。
しかし、亜鉛不足や過剰摂取は、健康に悪影響を及ぼす可能性も。
ここからは、亜鉛に関するよくある質問にお答えします。
毎日亜鉛を飲むとどうなる?
亜鉛は私達の体にとって必要不可欠な栄養素のひとつです。サプリメントなどで摂取している方も多いのではないでしょうか?
適切な分量を摂取しているのであれば、亜鉛は毎日体に入れても問題ありません。
しかしながら、中には「亜鉛過剰症」といって亜鉛を取りすぎている症状をお持ちの方もいるようです。
急性亜鉛中毒により、嘔吐や下痢、腹痛、頭痛、食欲不振、抜け毛や、肌荒れ、などの症状が現れてしまう場合もあります。
サプリなどを通して、亜鉛を過剰に摂取しないよう注意しましょう。
亜鉛不足になるとどんな症状が出る?
亜鉛不足になると「亜鉛欠乏症」となる方もいます。
亜鉛欠乏症の主な症状は、下記のようなものがあります。
- 味覚障害(舌に存在して味を感じる細胞の味蕾が減少して味を感じることができなくなる)
- 物忘れが激しくなる
- 免疫力が下がる
- 貧血
- 性能力が低下する(精子が減少したり無月経になったりするなど)
- 視力が低下する
- 脱毛や薄毛になりやすい
- 傷の治りが遅くなる など
亜鉛を多く含む食べ物を食べたり、過剰摂取にならない程度にサプリから亜鉛を取るようにして、健康的な毎日に役立てましょう。
亜鉛不足には何を食べたらいい?
亜鉛を多く含む食材はこちらです。
- 牡蠣
- 豚肉や鶏肉レバー
- 牛肉(肩、ひき肉、テール)
- うなぎ
- ほや
- 煮干し
- 卵黄
- 大豆製品
- チーズ
- ビーフジャーキー
- ごま
- カシューナッツ
- アーモンド など
亜鉛は動物性のものに多く含まれています。
ベジタリアンやビーガンの方はごまやナッツ類を積極的に摂るのが良いでしょう。
亜鉛を上手に摂り入れて体臭に悩む日々とはさよならしましょう
亜鉛は意識をしないとどうしても不足してしまいがちな栄養素になります。そして、不足してしまうと体臭だけでなく、体に不調が生じてしまうので、上手に摂り入れてあげることが大切です。
ただし、過剰摂取も良くないので、食事だけで補えない時には正しくサプリメントを使用して、体臭とさよならして健康な体を手に入れましょう。