【インタビュー】フィレンツェ発、創業400年の香り。「サンタ・マリア・ノヴェッラ」がおすすめする“最初の1本”とは?
フィレンツェで約400年続くハーブ薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ」。その日本旗艦店「サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座」は銀座6丁目にあります。上品で落ち着いた雰囲気の店舗には、オーデコロンやソープなどの香りのプロダクトを中心に日本で展開しているほぼ全ての商品が並んでいます。ずらりと並ぶオーデコロンの棚はまるでヨーロッパの香りのミュージアム…とっても格調高い感じです。トレンドを意識していないはずなのに現代の様々なシーンでしっくりと馴染む香りの数々。中には数百年前からレシピが変わらないものもあるというから驚きです。ちょっと香り上級者向けに感じる「サンタ・マリア・ノヴェッラ」ですが、この中から毎日使える、自分にピッタリの1本を探すことはできるのでしょうか?サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座店にFELICE編集部Ayanoとライター小林がお邪魔しました!
2017年11月09日更新
記事の目次
最初の1本”を探しにサンタ・マリア・ノヴェッラ銀座へ
Ayano「知人からフィレンツェのお土産にもらったローズウォーターがとてもいい香りだったので、前から気になっていました。今回はオーデコロンを探してみたいです。」
小林
「私も初めてなのですが、とくに爽やかで軽い付け心地の香りを探しています。最近、自分で自分の香りに酔ってしまうことが多くて…」
サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座店のSさん(以下、Sさん)
Sさん
「ありがとうございます。ぜひ“最初の1本”を探すお手伝いをさせてください。まず、私どものブランドの入り口になる香りをご紹介させていただきます。こちらはサンタ・マリア・ノヴェッラの香りで最も代表的な1本、『サンタ・マリア・ノヴェッラ』です。」
【サンタ・マリア・ノヴェッラ】16世紀フランス宮廷を魅了した「永遠の定番」
Ayano
「あ、これ、ネットで見てきました。歴史のある香りですよね?」
Sさん
「カテリーナ・ディ・メディチの輿入れのために特注された香りです。彼女は16世紀半ばにフィレンツェの富豪・メディチ家からフランス宮廷にお嫁入りしました。この爽快なオーデコロンをつけて宮廷デビューしたカテリーナは、フランス宮廷で大ブームを引き起こしたそうです。当時のフランスではきつめの香水を使っていたので、軽やかなオーデコロンがカルチャーショックだったのですね。」
Ayano
「この香りはお嫁入り道具だったのですね…でもあんまり甘くないですね?むしろユニセックスといえるぐらいさっぱりしています。」
Sさん
「たしかにお嫁入りの香りとしてイメージするものとは少し異なるかもしれないですね。とても爽やかです。様々なシーンでオールマイティに活躍しますし、四季を問わずにお使いいただけます。あからさまな女性らしさではなく、大人の甘さがあり、その中に適度な強さと潔いキレの良さがあるかと思います。」
▲オーデコロン サンタ・マリア・ノヴェッラ 100ml 17,280円(税込)
Sさん
「このオーデコロン『サンタ・マリア・ノヴェッラ』のベースになっているのは、カラブリア産ベルガモットの苦みのある柑橘系の香りです。」
小林
「カラブリアってどのあたりでしょうか?」
Sさん
「イタリアの地図を長靴になぞらえると、つま先辺りにあるのがカラブリア州です。お隣にはレモンで有名なシチリアがあり、この辺りは柑橘類の名産地帯です。」
Ayano
「天然香料で作られているのはネットで見ましたが、香料の産地までわかるものもあるのですね!」
Sさん
「サンタ・マリア・ノヴェッラの香りは、天然香料由来が中心ですので、日常生活のどこかで嗅いだことのある香りが多いと思います。合成香料とは異なる良さ、体になじむ感覚は天然香料の特徴かもしれないですね。」
小林
「サンタ・マリア・ノヴェッラさんの始まりは修道僧の製薬活動だと聞きました。」
Sさん
「はい。サンタ・マリア・ノヴェッラの始まりはドミニコ修道会の教会で修道僧たちが行った製薬活動でした。今から800年ほど前のことです。ドミニコ修道会の教えでは“癒し”がとても大切なものとされていたので、もともとは修道士たちが自分やその周囲の人々への“癒し”の実践のために修道院内の薬房から始まったのです。」
小林
「癒しから始まって800年続いているのですか、癒しって、やっぱりすごいパワーですね!」
【ローズウォーター】咲き誇るバラの芳香。中世からの大ベストセラー
Sさん
「その歴史を感じられる一本がこちらの『ローズウォーター』、いわゆる薔薇水です。1381年には既に製品化されていたことが分かっています。」
Ayano
「あ、これです、私がフィレンツェのお土産にいただいた香り!」
Sさん
「『ローズウォーター』はオーデコロンではなく、ハーブウォーターとしてお取り扱いしています。使用法もオーデコロンとは少々異なるのですが、すでにお使いのお客様はご自宅でどのような使い方をされていますか?」
Ayano
「スプレーに移して、化粧水代わりに使っています。リフレッシュしたいときや、日中に肌の乾燥を感じたらシュッシュッ、と…。」
Sさん
「そうですね!リフレッシュ感がありますので、いろいろな使い方をされるお客様がいらっしゃいます。リネンウォーターとして枕カバーやシーツに振りかけると、とてもいい気分でお休みになれますし、帰宅時に足元のリフレッシュに一吹き、という使い方を教えてくださったお客様もいらっしゃいます。」
小林
「デオドラントの感覚ですね。」
Sさん
「サンタ・マリア・ノヴェッラの『ローズウォーター』は様々ある薔薇水の中でも現存する最古のレシピを使って作られます。原料として使用するのはセンティフォリアローズといい、ピンクの色味が強い5月のバラです。」
▲ローズ ウォーター 250ml/500ml 3,780円/6,480円(税込)
Sさん
「『ローズウォーター』は発売当時の14世紀の使い方を文献などで見ますと、ワインを薄めて飲むと健康に良いとされたり、錠剤を飲む時の水代わりに使用されたりしていました。歴史的には香りを楽しむことだけでなく、バラの効能を使いこなすために生み出されたものでした。バラには強い殺菌力もあると信じられていたため、ペストがトスカーナに大流行した時には、家々に撒き、消毒にも使われたそうですよ。」
小林
「歴史的なお話ですね…ホーリーウォーター(聖水)って感じがします!?」
Sさん
「使い方は時代と共に変わりましたが、今でも多用途に使えて、とても使い勝手が良い一本です。ちなみに、『ローズウォーター』には男性ファンも結構いらっしゃいます。」
小林
「男性ファンも…!?でも、分かる気がします。この『ローズウォーター』もフェミニンな香りをイメージするといい意味で裏切られます。バラ園の中を歩いているようなリアルなバラの香りがしますよね。」
Sさん
「『ローズウォーター』だけでなく、私どものオーデコロンはジャスミン、カーネーションなどの香りも本物の花の香りに近い、苦みのある芳香がします。天然香料を使用してブレンドしたユニセックスな香りが基本ですので、フィレンツェ本店だけでなく日本の店でも男性がお花の香りを選んで買って行かれることも多いです。」
小林
「そういえば男性におすすめする香りというのはありますか?近々ちょっとしたプレゼントをしなくちゃいけなくて。」
【ポプリ】熱烈な男性ファンの声でラインアップがどんどん充実
Sさん
「『ポプリ』などは男性に人気がある香りです。」
小林
「ポプリ?」
Sさん
「はい。天然の草花で作られるポプリです。フィレンツェの丘に咲く植物の花や葉、実などを素材に生み出されたものです。この香りのファンは男性の方が多いですね。」
小林
「うわー、おしゃれな男性の好きそうな香り。」
Ayano
「わかる!」
Sさん
「適度なスパイス感とナチュラルな香りが重なった『ポプリ』は他にはないという評価をいただくこともあります。」
▲シルクサシェ 各40g 各7,344円(税込)
小林
「このサシェ、3つありますが、香りの違いってなんでしょう…?」
Sさん
「わかりづらく申し訳ございません、サシェのカラーは異なりますがサンタ・マリア・ノヴェッラで『ポプリ』というとこの香り1種類のみです。サシェ、テラコッタの壺に入っているもの、ハードワックスに固められたもの、オーデコロンなどラインアップが豊富ですが、香りは全て同じ『ポプリ』です。」
▲オーデコロン ポプリ 100ml 17,280円(税込)
Ayano
「『ポプリ』という名前のオーデコロンもあるのですね。ちょっとややこしい…」
Sさん
「もともとはルームフレグランスの『ポプリ』のみでしたが、人気に火がついて『ポプリ』のオーデコロンも生まれました。ルームフレグランスからオーデコロンが生まれたのはこちらの香りのみです。『ポプリ』の香りに一番合う季節は秋冬ですね。ウッディでスパイシーな香りですので…ただ年間を通して使えますし、ソープをライン使いする男性のお客様も多いです。」
小林
「サシェはプレゼントとして気軽に使えますね。オーデコロンを贈るのはちょっと重い感じがして勇気がいるけど…。」
Sさん
「シルクのサシェは刺繍も豪華ですから、男性も貰うと嬉しいのではないでしょうか。おしゃれで取り扱いがしやすいので、車に乗せて使う方も多いですよ。」
小林
「まさにモテギフトですね…ムフフ。」
Ayano
「あのー…サンタ・マリア・ノヴェッラさんの“モテる香り”とか、ありますか?」
Sさん
「全員が同じ香りでモテるということは難しいと思いますが、お客様お一人お一人のキャラクターや雰囲気に合った香りをおすすめして魅力を高めるお手伝いはできるかも知れません。」
【フリージア】女性向けのフェミニンな香りの入り口となる1本
▲オーデコロン フリージア 100ml 17,280円(税込)
Sさん
「モテ香というわけではありませんが、今、フェミニンな香りとして人気があるのは『フリージア』です。」
Ayano
「わー、最初は清楚でさっぱりとしているけど、肌にのせると体温で温まって甘さが出てきますね。」
Sさん
「はい。シングルノートでシーンを選ばないのも魅力です。オン・オフ、どちらでもお使いいただけます。癖がなく、清潔感がありマイルドで、嫌味のない香りです。たくさんの方に受け入れられやすい香り、と言えるかもしれませんね。サンタ・マリア・ノヴェッラの入り口として知っていただきたい香りの1つです。」
小林
「フリージアって、小さめのスイセンというか、よく春のお庭に咲いている花ですよね。清楚ながら子供っぽくない香り。大人の甘さを感じます。まさにモテ香…。」
【ガーデニア】愛されている大人の女性のための濃厚な香り。
▲オーデコロン ガーデニア 100ml 17,280円(税込)
Sさん
「こちらはガーデニア、くちなしの香りのオーデコロンになります。」
小林
「あっ…トロリと甘くて適度に爽やかですね?」
Ayano
「いい女の香り…美女って感じ?」
Sさん
「たしかに大人の女性に似合う香りかもしれないですね。ガーデニアは1800年代にドレスにピンで留めて飾るため、男性が女性にプレゼントすることが大流行した花です。」
小林
「ロマンティックですね~。日本の男性も見習ってほしい。」
Ayano
「くちなしって、ヨーロッパで花嫁さんのブーケによく使われる白い花ですよね。」
小林
「あ、思い出しました。古い映画ですけど、イタリア男性が主人公の女性にガーデニアの花をうまく渡せなかったために、女性は一夜限りの関係だったのね、と去ってしまった。」
Ayano
「映画のイタリア人の彼は本気だった、ってことですね~!?」
小林
「いまあの一輪のガーデニアの意味がわかりました…。イタリアでは愛される女性はガーデニアの香りがする、というわけですね。これもまさにモテ香。オーデコロンをたった1本選ぶのに、たくさんの面白い話が聞けましたね。」
Ayano
「聞きすぎて迷ったかも知れません。」
小林
「やっぱり定番の香り『サンタ・マリア・ノヴェッラ』のオーデコロンかなぁ…」
Ayano
「え?私も。そう思っていました。」
小林
「二人とも同じ香りだとつまらないですね…というか、オフィスに香りが被った人がいるのは残念かも。」
Sさん
「同じ香りでアレンジされている方もいらっしゃいます。香りのレイヤー(重ね付け)です。オーデコロンの『サンタ・マリア・ノヴェッラ』はとくにレイヤーで使いやすいオーデコロンのようです。バニラを加えたり、温かみやスパイシーな香りを加えてみたりと、オールマイティに活躍します。」
Ayano
「レイヤーって、難しそう。素人がやると香りがケンカしたりしないですか?」
Sさん
「完成された香りをあまり考えずに重ね付けしてしまうと、ぶつかりあって不協和音が起きることはあります。ただサンタ・マリア・ノヴェッラのオーデコロンは天然香料を中心とした香りのブレンドですから、お花のブーケと同じように、香りの重なりで深みが増すことがあるようです。」
Ayano
「同じ香りでもつける人がアレンジできるのですね。」
最新テクノロジーが支える充実した化粧品ライン
▲ボディ ミルク 250ml 10,800円(税込)
Sさん
「化粧水やボディミルクなど、肌につける化粧品は最新技術の裏付けがないと安心で安全な製品を提供できません。サンタ・マリア・ノヴェッラの化粧品はその点でも安心していただけると思います。」
Ayano
「いろいろなアイテムがあるのですね。化粧水はさっきの『ローズウォーター』と、どのように違いますか?」
Sさん
「フェイストニックは配合された植物由来成分によって、より保湿力が高くなります。」
小林
「化粧水・クレンジングミルク以外にも、日焼け止め、アイジェル、ナイトクリーム…いろいろありますね。あ、レモンのハンドクリームもある。」
Ayano
「ボディトリートメントは値段も手ごろですね。ボディミルクとオーデコロンで違う香りを使ってレイヤー使いをしてみようかな。」
小林
「あ、そのアイディアいい!寝る前と朝だと、欲しい香りも違うし。私は癒し系の甘い香りのボディミルクとしゃきっと爽やかなオーデコロンにしてみます。」
Sさん
「もともとオーデコロンの香りは軽いので、香りが飛んだら一日のタイミングごとに別の香りを使ってもリフレッシュできるかもしれないですね。」
小林
「うーん、奥深い。いくつも欲しくなってしまう。」
Ayano
「ですね。ファンが多いのがうなずけます。」
Sさん
「日本のお客様はサンタ・マリア・ノヴェッラの歴史や文化も理解してご愛用してくださる方が多いので、本国のイタリアでもとても大事にしています。日本の方が天然香料の良さや手仕事に対してリスペクトしてくれているのは、イタリア本国にとってもうれしいことのようです。」
小林
「日本人とイタリア人は、どこか似ているのでしょうか?どちらも長い歴史がある国ですよね。」
Sさん
「そうかもしれないですね。フィレンツェは京都と姉妹都市です。脈々と続く伝統文化と発展を両立していくメンタリティは似ている部分が多いです。この二つの都市は経済・文化交流活動も盛んです。」
小林
「そういえば、京都の老舗さんは生き残るためには伝統を伝えるだけでなく、今のニーズをとらえて絶えず現代化したり、アレンジしたりしていますよね。」
Sさん
「イタリアにも『イタリア老舗協会』といい、100年以上途切れることなく活躍を続ける企業だけが参加できる組織があります。サンタ・マリア・ノヴェッラの社長はその代表を務めています。」
小林
「100年どころか、400年歴史がある企業なんて滅多にないですよね!まさにThe老舗、って感じですね。」
Sさん
「修道士たちの“癒し”のために始まったハーブ栽培や製薬活動が時代を超えて今の時代につながっていることを感じます。顧客リストにはその時代ごとのヨーロッパの貴族たちや多くのセレブリティがみられます。それでいていつの時代にお使いいただいても納得していただける商品だと思います。」
Ayano
「長いお付き合いが出来るブランドさんですね。今日は楽しいお買い物ができました。」
Sさん
「ありがとうございます。ほかにも店頭だからこそお伝えできることはたくさんございます。ぜひ、またのご来店をお待ちしています。」
■取材協力:サンタ・マリア・ノヴェッラ
■取材・文/小林晶子